[与謝郡] 河童と瓢箪 昔、ある所で日照りが続き、田んぼが干上がったので、爺さんが「この田んぼにいっぱい水を張ってくれたら、うちの娘を嫁にやるのになあ」と独り言をいった。 それを河童が聞いていて、「本当にくれるか」と念を押すと、爺さんは「ああ、やるとも」といった。 次の朝、爺さんは田んぼへ行って、びっくりした。干上がっていた田んぼに、水がいっぱい入っていたのである。 爺さんは、早速、家へ帰って、婆さんにこのことを話しているところへ、河童がやってきて、「娘をもらいに来た」といった。 「これは、えらいことになった」と、爺さんと婆さんが思案しているところへ娘が来て、「瓢箪を百個買ってくれたら、私は河童の所へ嫁入りします」といった。 そこで、爺さんは瓢箪を百個買ってくると、娘はそれを河童に担がせて、池へ向かった。 池に着くと、娘が「この瓢箪は私の大切なものだから、先に一つ残らず池の底に沈めてちょうだい」といったので、河童はそれを一所懸命に沈めようとしたが、あちらを沈めると、こちらが浮かび上がり、こちらを沈めると、あちらが浮かび上がるので、河童はヘトヘトになり、とうとう死んでしまった。 こうして、娘は河童の嫁にならずにすんだので、家へ戻って来た。 そこで、再びこの娘に合うことが出来ないと思っていた爺さんと婆さんは、たいへん喜んだという。 |